【特集鼎談 高齢者福祉 Vol.2】入居施設・老人ホームの これまでとこれから
2022.12.16

寒い北海道ならではの事情とは?

瀬戸 昔は「越冬入所」と言って冬になると「除雪ができない」「買い物ができない」などの理由で施設に入りにくる人がいました。最近は在宅サービスが充実しているので、少なくなったかもしれません。

神内 今でも病院や在宅サービスが少なく、鉄道が廃線になるような地方の地域にお住まいの高齢者は、在宅での生活を継続することが難しい。そうなると施設に入らざるを得ないか、都会で生活する家族が引き寄せをするしか方法がない。でも家族と同居となれば、うまくいかないことも多々あり、短期間の間だけアパートなどの物件を借りて入居するなど、以前は公的なサービスを使っていたことが、今は民間のサービスにブレークダウンしている現状がありますね。

瀬戸 本州だと地域のつながりや親戚関係などから「親を施設に入れるなんて!」という風潮がありましたが、北海道は施設入所に関しておおらかな土地柄のように思います。

今後の業界の展開について

神内 新型コロナウィルス前なら地方分権のままだったでしょうが、その動きが見直される可能性が出てきましたね。備蓄に関して事業継続計画(BCP)を立てて用意してと言われていたことがチェックもされない。地震や台風による洪水とか自然災害が発生する度に言われていますが、このあたりをきちんとしくみ化していかないと、何か非常事態が起こった時に対応できなくなる。ポストコロナの時代には新しいルールや考え方が必要になるのかもしれません。

齋藤 感染症対策に対して実際に施設を訪問して感じたのは、システマチックに管理されていて、発生への対応が早く的確だと感じました。レベルも高く、感染対策に関して進んでいる業界なのだと安心しました。

神内 日常的に感染には注意を払っています。介護度が高い方を優先的に受け入れる特別養護老人ホームや、多床室など複数人が個室に入居する介護老人保健施設もそうですが「命を預かっている」という面から、各施設がシビアに対応していると思います。対応の仕方に関して、各法人の普段の教育や研修が、非常事態の今だからこそ活きてくるのだと感じます。一方で、どこまで備えるかといった費用対効果の視点も考えなければなりません。

瀬戸 そういった点から見ても、組織の大規模化に繋がってきます。1施設なら大した備蓄もできないですが、大きな組織なら全体でリスクに備えることが可能です。今後この流れが強くなるような気がしています。国会では社会福祉法人の連携が議論されており、今後は社会福祉法人同士が連携しながら対策準備を行う可能性がでてくるのではないでしょうか。

われわれのサービスが試される時

神内 デイサービスや機能特化型・予防型などのサービスは自立度が改善していなければ、そもそも必要なサービスなのかという議論になっていくのではないでしょうか。新型コロナウイルスの影響で全体的に給付費が縮小した場合どうやって運営していくか?今後はICTを使いリモートで利用者さんと面談したり様々に工夫することで介護業界も変わってくるかもしれません。

瀬戸 もともと必要なサービスだったのか?という話ですね。業界全体的なサービスのあり方が試されているのかもしれません。

齋藤 病院なども習慣で通っていたが、コロナ禍の今は患者さんが少なくなっていると聞いています。「病気になるのが怖いから病院に行かない」といった悪いジョークも耳にします。

神内 特にデイサービスが今後どうなるのか?コロナで利用しなくなった人たちが戻ってくれるのか?動向を注視しなければなりません。

瀬戸 来年、ちょうど報酬改定の年なのですが、現時点で議論ができていない。どうなるのか心配です。また、慢性的な人手不足でしたが応募が増えてきていて、一時的には解消されるかもしれないと期待しています。

神内 今、不況に左右されない業種として、じわじわと介護職の応募が増えている状況です。10年ほど前のリーマンショックの時もそうでした。その時は、どんな人でも採用していましたが結果、サービスの低下や事故を招いてしまった。そんな反省が業界内にあります。

瀬戸 ケアマネジャーも試されているかもしれない。サービスありきで組み込む時代ではなくなったかもしれませんね。

業界団体の代表として

瀬戸 北海道老人福祉施設協議会は社会福祉法人の老人福祉施設の組織ですので「地域における福祉推進の役割を果たさなければならない」と思っています。今一度、この原点に立ち返りみんなで推し進めなければならない。経営側からみるとコロナ禍の今は「リスクがあるから利用者を入所させないほうがいいのでは」となりますが、それでは存在意義がありません。今だからこそ老人福祉施設に対して「最後まできちんとやってくれた」と言ってもらえるようになりたい。万全な予防対策をして地域ニーズに応えたいと思っています。

神内 社会福祉士会としては、社会福祉士資格のカリキュラム改定が迫っています。地域社会によって求められる専門的能力が変わるので、単純にケースワークができればいいというわけではなく、コミュニティワークの能力など従来より一段高い能力が求められています。ソーシャルワークの機能発揮としては地域の民生児童委員や介護福祉士などの専門職がありますが、こういった専門家等を束ねる能力があって初めて社会福祉士の専門性につながります。どこまで既存の福祉士がバージョンアップできるかが課題。新しい情報で教育を受けた人は方向性の理解がありますが、ひと昔前に資格を取った多くの福祉士がアップデートしなければ機能していかないと思っています。少子高齢化の中で、もっと質も追求していかなくてはならない状況。どのように育成していくかが問われています。会としては北海道という広域の中で、どうやって一枚岩となって進んでいくかは難しい問題。同協議会では現在、理事が最低数の16人とコンパクトです。連携を取り合っていきたいと思っています。

相談員に向けたアドバイス

神内 相談員という相談のプロがこの情報誌をどのように使うのか?載っている情報をそのまま伝えるだけでなく、例えば「この施設のキーパーソンは誰か?」「連携するならこういう方法がある」「実はこういうデータが載っているが更新されていない」といった付加価値情報を伝えられる存在になってほしい。それがなければ、ネット検索で事足りてしまう。専門家が介在する意味とは何か?を考えることが重要です。

瀬戸 相談員って、その施設の顔なんです。その顔に信頼性があれば、その施設・法人を使うことにつながります。だからこそ様々なことを学ばなくてはなりません。「そこはわたしの専門外なのでわかりません」ではダメ。的確に紹介できるようになって初めてプロだと思います。

齋藤 一般の人から見たら、施設の人に何かを聞く機会って少ないですよね。相談員と話す機会なんて一生に1回あるかどうか。

瀬戸 その時に「わかりません」と言われたら、もう2度と連絡は来ないのです。

神内 病院や施設に自らお世話になりたいと思う人はほとんどいないでしょう。だからこそ関わることになったら、その重さを受け止めてあげなくてはならないのです。来たくて来ているわけじゃないんですね。利用者とわれわれ側との情報の非対称性があって、問い合わせてくる人はなにも知らないのです。施設なんかどこも同じサービスを提供していると思っている。ただ値段が違うくらいだとの認識です。こういった人たちに対してどうやってわかりやすく、緊急度を推し量りながら救いの手を差し伸べるのか。ここが問われているということを今一度忘れてほしくないですね。